「俺たちが騎士になった目的?」
問いかけられながら龍騎は手元の棒を空高くに思い切り投げた。砂煙を上げながら地面を蹴りつけ空に飛びあがった白い飛竜が棒を捕らえようと口を開き、取り損ね地面に落ちた棒を拾いに行く。下手だな。龍騎がぼやいた言葉が聞こえたのか棒の落ちた近くから抗議の鳴き声が響き渡る。
隊舎近くの竜が備える竜舎。仕事を終えた龍騎は自身が担当する竜のりんごの調子を見に来ていた。そこに通りかかった彼はふと気になっていたことを口にした。
「龍騎さんはまだしも、遥さんは何というか……組織として動くのが」
「ああー、苦手っていうか嫌いか。誰かの指示を聞くのも誰かに合わせるのも」
竜舎の外から飛び戻ってきたりんごが拾った棒を龍騎の目の前に落とした。一本だったはずの棒は二本に分かたれていた。棒から視線を上げれば逃げるように竜舎に帰ろうとする白い姿。龍騎はその背中に向かって分かたれた棒の片方を強く投げつけた。ぶつけられたりんごは悲鳴に似た高い声を出す。人とは比べ物にならないほど硬質な皮膚を持つ彼女にとって痛みを感じるほどではないはずだが、りんごは自分にぶつかり落ちた棒を再度龍騎の目の前まで運ぶとその場に伏せた。
壊したなら自分で捨ててこい。割れた棒を指さし、後にごみを置いておくための場所を指させばりんごは器用に二つになった棒を咥えてどこか地面を見るように視線を落として運ぶ。
相変わらず。
通りがかりに声をかけたクロナはごみ置き場へ棒を捨ててきた人外、竜を褒めてすぐに機嫌を直させた龍騎を見る。相変わらず竜によく好かれ扱いを心得ている。
「俺たち二人とりんごとで生きていくなら傭兵だろうが構わないんだけどな」
屈んでいた姿勢から立ち上がった龍騎は膝に着いた土を振り払う。
「うーん、そうだなあ」
「言いづらいことならこれ以上は聞きません」
「いや、別にクロナさんなら構わない。少し前に息子が出来たんだ」
は。思わず間の抜けた声がクロナから漏れる。慌てて取り繕うように謝った。だが。信じられない。龍騎の妻、遥は今日も自分の隊の騎士を相手に暴れていた――正確には過激な稽古をつけていた。少し前に子供を身ごもったか、産んだとは到底考えられない。
困惑するクロナを前に龍騎は笑う。
「血は繋がってない。なんというか、騎士になる前の仕事先で遥が拾ってきたんだ」